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東京と群馬を行ったり来たりしつつ現場でひたすら制作し、ついに開幕となった。

これまで描いた事のない大きな画面、わずかな緊張と高揚感を伴わせ描き始めた日が蘇る。

森にあるレジデンス施設に寝泊まりし、新しく出会った仲間達と寝食を共にした。
団体生活などほとんど経験したことはないし、大丈夫かなと危惧していたけれど
毎日が楽しく、ころころと笑い合い、時には熱く語り合った。
制作の事だけを考え、日々町の人たちと言葉を交わし、朝から晩まで制作に打ち込んだ。

美しい里山。

レジデンスの鍵にはクマ除けの鈴がついていたり、イノシシに出会わないよう、
山ヒルに血を吸われないよう警戒しながらも、
様々な生命が生息するこの場所がかけがえのない豊かな場所に思えた。
大きく白い腹の蛾は美しく。
暗い夜空にひときわ輝く月と星、そして虫の音色。
縦横無尽にはしる稲光。
数え切れないほどのホタル。
源氏ボタルと平家ボタルが行き交う幻想的な光景は、この先一生忘れる事はないだろう。
空へとのぼるほのかな光を目で追うと無数の星と入り混じる。
闇が深い木々の合間に見る光はより強い。

森にたちこめる霧。
木々や草花にかかるミスト、グレーの諧調がいったいどれくらいあるのか。
その場で体感した匂い、音、そして色が私の内側にしみ込んでいった。

滞在する日が長引くにつれ、町の人たちが私の存在を知る。
私のわずかな体調の変化にさえ気付いてくれる。
優しい言葉とさりげない気遣い。
些細な日々の出来事が私の日常をつくり制作に影響を与える。

縁もゆかりもなかったこの町は、親しい友人が居る場所になり
おかえりといってもらえる場所になった。
あわせて45日間滞在した。
この先も途切れはしない絆ができたと確信している。

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