つながりあう世界

ーミクロの森 マクロの記憶ー

Interconnected Worlds

— Microscopic Forests, Macroscopic Memories

This installation piece was created during my stay at the artist-in-residence program Atelier Cabin last year.

Wandering through themes as if through the forest itself, I drew inspiration from the volcanic activity of Mt. Asama, the dramatic lava landscape of Onioshidashi Park, and the delicate structure of hikarigoke (luminous moss/Schistostega pennata).

Cells become glass beads, chlorophyll becomes shimmering beads, and mineral crystals are abstracted in metal.

This is an attempt to visualize the hidden forms and systems of the natural world.

The power and rebirth of nature, the unseen roles played in its cycles, the quiet resilience of life—

Like hikarigoke, softly glowing in the dark, I hope to share a light that emerged within me.

You’ll also find inspiring works by other artists. If you’re visiting North Karuizawa, please stop by and enjoy this unique exhibition!

「アトリエキャビン成果展」に出展しています!

会場:北軽井沢/ルオムの森 百年の洋館にて

会期:2025年4月4日(金)~5月19日(月)

営業時間:11:00~17:00(火曜休み)

https://luomu.jp

昨年参加した「アトリエキャビン」のアーティスト・イン・レジデンスでの成果を展示しています。興味を引かれたテーマをもとにリサーチし、試行錯誤を重ねながら制作を進めました。まるで森の中を行きつ戻りつ彷徨うように、作品の方向性を模索する日々でした。

今回は、浅間山の噴火による一連の自然現象を核とし、鬼押出し溶岩跡地の壮大な景観から着想した絵画と、岩陰で淡く光るヒカリゴケの細胞構造を模した造形作品によるインスタレーションを出展しています。

自然が持つ脅威と豊かさ、消滅と再生のサイクル、そして過酷な環境に適応する生命の柔軟さには深い感銘を受けました。暗がりでほのかに光って見えるヒカリゴケのように、私の内に広がった光をお届けできればと思います。

他の作家さんたちによる素晴らしい作品も展示されています。北軽井沢にお越しの際は、ぜひお立ち寄りください!

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「つながりあう世界 ーミクロの森、マクロの記憶ー」

自然界における多様なつながりを考察し、その原理を探りながら、森羅万象の一端をすくい上げることを試みる。生物も無生物も、それぞれ異なる時間の流れの中で影響を及ぼしあいながら、環境の一部として全体を構成している。人間の視点では捉えきれない関係性を探り、自然界に内在する形や秩序、変化の過程や仕組みを、科学的な視点も交えて表現している。

鬼押出し園の景観とヒカリゴケから着想を得た今回の作品では、微細な構造を視覚化し、細胞をガラス玉、葉緑素をビーズ、鉱物結晶を金属素材で抽象化している。ヒカリゴケの原糸体は、葉緑素を含む球状の細胞が密集し、光を反射しながら効率的に光合成を行う。そして、成長した茎葉体は全身で光を受け止める。本作では葉脈に似たレース素材を用い、自然の繊細なパターンを表現している。ヒカリゴケの特殊な構造は環境適応の例であり、最小エネルギーで最大の効果を得る自然の原理や、小さな単位が集まって大きな構造を形成する階層性が見られる。それは、植物細胞と鉱物の結晶構造にも通じ、私にとって特に親和性を感じる重要な要素である。

浅間山の噴火は、圧倒的な力で多くの生命活動を停止させた。しかし、噴火で生まれた裸地には、最初に地衣類や苔が根付き、やがて長い時間をかけて新たな生態系が形成されていく。自然の持つ強靭な力や、環境に適応するしなやかさ、そして私たちには見えない微小なものが果たす重要な役割がある。目に見えるものと見えないものが共存し、その連鎖のなかで新たな秩序が生まれる。

アトリエキャビン滞在では、人との出会いや豊かな自然環境に身を置くことで、受け取るものがたくさんあった。養蜂の見学では、蜂の巣の構造の美しさに心を動かされ、猟師さんにお借りした動物の骨、毛皮、木の実などを観察し、その形状に惹きつけられた。浅間山の噴火にまつわる様々なことを見聞きし、改めて自然のダイナミズムを考える機会にもなった。また、何気ない会話の中で、自身の関心事を引き寄せ、深く考え直すことができた。新たな発見や異なる視点が交わることで、世界はより豊かに織りなされ、多様性の本質が響き合う。

アトリエキャビン成果展に出展します。

会期:2025年4月4日(金)ー5月19日(月)

会場:ルオムの森(洋館):群馬県吾妻郡長野原町北軽井沢1984−239

営業時間:11:00-17:00 (火曜定休)

※ 都合により営業を変更することがあります、最新のスケジュールはHP、SNS

でご確認下さい。 https://luomu.jp

主催:有限会社きたもっく

私の展示会場は、ルオムの森(洋館)の2階です。

お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。

ありがとうございました

群馬県立自然史博物館での展示は5月12日を持ちまして終了いたしました。お越しいただいた皆様、また気にかけて下さった皆様どうもありがとうございました。思い起こせば2009年位から地学に着想を得た作品をつくり始めたと記憶しています。マーブル模様やエンコウスティック(蝋画)で絵画を描くところから始まり、造形や結晶を育てたものを組み合わせてインスタレーションに展開したり。専門知識を持ち合わせている訳ではありませんが、石を通して見る世界は奥が深く、それを知るたびに感動して制作に反映してきました。石は地球のかけらであり世界のかけらであり構成要素であって、私達も含め全てにつながっているのです。

私の永遠のテーマ「つながりあう世界」

展示が終わってしまいとても寂しいですが、今回採用しなかった「拵え鉱物」のアイディアがまだあるし、これからも生まれそう、植物も所々出現すると思いますが、これらをパワーアップしつつ更に展開していきたいと思っています。そして、梅雨明け位に短期のアーティスト・イン・レジデンスに参加します。リサーチ中心の滞在になる予定ですが準備をすすめています。どんなインスピーレションを得れるかなと、とても楽しみです!

拵え鉱物

「拵え鉱物」について

群馬県立自然史博物館の企画展「紳士淑女のための鉱物展」(2024年5月12日まで)にて展示中の作品「拵え鉱物」について。キャプションにて前述しましたが、今回は身近な物を鉱物に見立てて、各々に手を加え再構成し、空想の鉱物を拵え(こしらえ)ました。

企画書を頂いた時、展示構成のなかの「鉱物見立て回廊」という文字に目が止まりました。石好きならピンとくるのですが、様々な色や形、質感などを持つ鉱物を見ていると、ときに花や卵や菓子に見えたり、石の中に木立や海や宇宙が見えたり、はたまた細胞や血管のようだと思えるものもあります。鉱物標本をなにかに見立てて、標本以上のなにかに意識を広げようとするのだとしたら、一方の私は、身近なものを鉱物に見立てて、架空でありながらも鉱物的要素を含んだ拵え鉱物で応答しようと考えました。

そうなると見立てるということにフォーカスした状態で、日常で目にするものが脳内の引き出しに入れておいた色々なイメージとつながっていきます。

店先で大量に積み上がっている六角柱のペン立てをみれば、柱状節理だね。と思ったり

黒光りした飾り用のガーランドをみれば、結晶が密集してるよね。と思ったり

六角柱の隙間からガーランドを所々だして、結晶はすきまに入り込んで成長するもんね。と思ったり

これまでもよく作品に登場するマーブリングの繊細な模様は瑪瑙のようだなと思っています。こちらは糊状の溶液に落とした絵具の広がりや押し合う力で生み出される模様を紙に写し取り、組み合わせ、溶かした蜜蝋を染み込ませて紙の素材とは違う質感に仕上げています。

雲母の結晶のような紙の集積は、規則的でありながら一つも同じ形のないものとして、紙を手切りし1枚1枚糊付けし密集させています。同心円状に薄い層が重なり風化した瑪瑙に見立てた卵と共に構成しました。1年間食い貯めた卵の殻や紙の制作には途方もない時間がかかっていますが、結晶が成長する時間を考え、その日々の時間も加味したかったのです。こちらの母石となる土台はコルク素材にとろみのある絵の具を流したり引っ張ったりして描いています。コルクの粒々や小さな穴に絵の具が沈んだり引っかかったりする様子もまた、鉱物が成り立つひとつの要素と似ています。ビーズなどはそのままで結晶に見立てることもできなくはないですが、転がしておくだけではやはりビーズにしか見えず、ランダムな方向づけをして多角的に光を捉えることができるようにしています。

今回は鉱物展のための作品だったため、鉱物に絞りきって制作しました。制作期間に余裕があったこともあり、様々なパターンを試す事ができてとても楽しく、最終的にどう落とし込むか絞っていくのに試行錯誤しました。アイディアがたくさんでてきて、拵え鉱物シリーズはまだまだ作れそう!

私にとって鉱物はとても魅力的です。知れば知るほど多角的にモノを見たり考えたりする機会を与えてくれます。ただただビジュアルの美しさを堪能することもできるし、一つの母岩に多数の結晶が育っているさまを通して多様性を見ることができたり、動かぬものとしての石ではなく私達人間とは全く違う時間の流れのなかで成長し変容しているという事を眺めることができたり。物言わぬ石だと思っていたものには、膨大な土地のデータが内包されていたり。

今回の紳士淑女のための鉱物展では標本の見せ方もとても工夫がなされていて、いままで石に全く関心のなかった方々にも興味を持っていただけるような、そんな企画展になっていると思います。図録もとても丁寧につくられていて、どなたにでもわかりやすく様々な鉱物の魅力が伝わるように解説されています。また鉱物の採掘にまつわる問題点などにも触れられています。私の作品も載せて頂けてめっちゃ幸せ。ぜひ会場にお越しになられた方はお手にとってみてください。ショップにありますが高橋キャスさんの塗り絵コーナーでもご覧いただけます。

そういえば、ブラッド・ダイアモンドという実話に基づいた紛争ダイアモンドの映画がありましたね。こちらはディカプリオ主演で内戦が続く90年代のアフリカが舞台となっていて、採掘場での強制労働や少年兵となんとも重いストーリーですがとてもいい映画で心揺さぶられます。泣いちゃうけどもう一度見ようかな。